Myself past foolish -Evil-最終話【愚かだった過去の自分 -悪-】

―ヴェルに連れられて孤児院に来てから、“数か月”という、子供にとっては決して短くない時が経った。
その間に、色々とあった気がする。
まず、最初にヴァザと風呂に入って、洗髪料 節約の為と髪の毛をザックリ切られた。
ずっと父さんと同じ髪型にさせられていたオレは、鏡に映る髪の短い見慣れないオレに何となく落ち着かない気分になって、前よりも髪型(くせ毛とか)が気になったものだ。
次に、去り際の“またな”の言葉通り、ヴェルが来た。
といっても、少しだけ世間話程度の話をした後、直ぐに どこかに行ってしまったが。
その後ろ姿が どこか父さんと被って泣きそうになったのをヴァザに見られて、何を思ったのか頭を撫でられた。
オレは恥ずかしくて思わず俯いた。
…そんな感じで、何となく日々が過ぎていき、孤児院で子供たちに“先生”と呼ばれる奴等とくらいしかコミュニケーションを取らずにいた。
(後で分かったのだがヴァザも先生だったらしい。主に、低年齢の奴等にお遊戯を教えていた程度らしいが。)
それでも孤児院という場所に だいぶ慣れてきた様に思うが、同い年くらいの“仮の家族”達や、孤児を養子として引き取りに来た大人に奇異の目を向けられる事が ままある。
やはり、人間と悪魔の子供、というのが興味や好奇心、または恐怖までを感じさせるのだろう。
最初のうちは好奇心に駆られた奴が仲良くなろうと話しかけてきた事があったがオレは一度だって それに応じた事はない。
どうせ どっちかは いつか どっかに引き取られていくんだ。
今仲良くしても どうせ離れないといけなくなるのなら、…二度と会えなくなるのなら、そんなの要らないと思った。
そんな感じに物思いにふけっているオレは孤児院一階、廊下の右端に立っていた。
傍から見ていると窓の外の庭を見ている様に見えるだろうが別に、何を見ていたという訳でもない。
―ふと、目を閉じてみる。
何だか、疲れてしまった様だ。


(何に…?)


自分で疲れたと認識しているはずなのに何故疲れていると感じるのかが理解できない。
不思議な感じだった。
このままでは思考の海に ただよって また変な事や嫌な事まで考えてしまうかもしれない。
誰か話しかけてくれ、と思った。
決して自分からは誰にも話しかけたくないオレの、心の中で呟いたワガママ。
誰にも届かないと思っていた。
だが、宙から いきなり声が聞こえる。


「…ねぇイーヴル君?
ちゃんと友達つくろうよ。
友達がいたら楽しいよ?」


宙…上の方から聞こえた声にハッとして 首だけ動かして そちらの方を見てみると直ぐ真横にヴァザが立っていた。
いつから そこに居たのか。
オレが目を閉じるまではいなかったはずだ。
窓ガラスにも何も映っていなかった。
という事はオレが目を閉じたタイミングで寄ってきたのか。
それにしても足音が聞こえなかったのが不自然だ。
ヴァザは いつも革靴を履いていて、普通の人間と同じく、歩けば足音がするのに。
ふと足元を確認してみるが足音がしにくい靴ではなかった。
やはり、不可解だ。
不思議そうにしているのが表情に出ていたのだろうか、ヴァザが にこにことしながら種明かしをしてくれた。


「ふふ、不思議かい?
では、種明かしをしてあげよう。
実はね…」


ヴァザが言うには こうだった。
まず、ヴァザは最初は普通に廊下を歩いていたのだがオレが廊下でボーッと突っ立っているのを遠くに見つけてから
なるべくオレにバレにくい様にと壁際を足音がしない様に這って進んでいたらしい。
服が汚れるのも気にせずに。
そして、オレが目を閉じた瞬間にサッと立ち上がり後ろに回り込んでみたものの、なかなか目を開けないから いきなり驚かすのも忍びないと優しげに声をかけてきたらしい。


「這って移動するのって、結構しんどいのだよ?」


「…の割には、他の奴も その手で驚かせてたな。」


「あれ、見てたんだ?
君は、よく周りを見ているよね。
…今度、私が他の子を驚かせてあげるから、その時に
“大丈夫?”とか、一言くらい声かけてあげれば良いよ。
そしたら きっと、声をかけらた方は君を優しい子だと思って友達になれると思う。」


オレに友達を作ってほしい一心で そう言うんだろうが、それは何か違う気がすると思った。
今ならハッキリと それは偽善だ、と言えるだろうが この頃は そんな事が言える様な知識がなかったから何も言わなかった。


―そして また場面が切り替わり、ヴァザが、オレへの宣言通り ある女の子を驚かせた。
その女の子は尻もちをついて泣き出してしまって…
ヴァザが、“慰めるなら今だ”とでも言わんばかりに目配せしてくるが
自分の こんなに近くで他人が他人に泣かされているのを見たのは初めてで、どう対処して良いのか分からずに
慰めや心配などできる様な冷静さもなく、思わず その場から逃げてしまい、ヴァザの思惑は空振りしてしまった。
女の子が友達やらに オレを薄情な奴だと言ったのかは知らないが
数日後、オレは“女の子を泣かせてしまった悪者”として、時には堂々と、時には陰湿に“制裁”とやらを加えられていた。
まぁ、平たく言えば いじめられた訳だが。
無視していれば そのうち納まるだろうと思っていたが どうも そんなに簡単ではなかったらしく、どんどんとエスカレートしていった。
そのうち、ぶたれたり蹴られたりする様になり、いじめてくる奴等なんて母さんと全然違うのに何故か母さんにされた事を思い出して怖くて抵抗が出来なかった。
元はと言えばヴァザが余計な気を回したせいで起こった いじめなせいもあって見つけ次第、ヴァザが注意してくれるのだが事態は更に悪化した。
今から考えると、まるで、自分が正しいのだと思って国に反乱を起こしている奴等みたいだと思う。
本人たちが自分のやっている事が悪い事だと認識していない以上は何を言っても火に油を注ぐ結果になってしまう。
孤児院で働いている、“先生”と呼ばれる奴等の中にはオレが抵抗しないから悪化するんだと言うのもいたがヴァザが それを否定した。
そして“先生”達の話しを聞いてしまったオレを見つけて気遣ってきた。
(オレが抵抗を出来なかった理由を知らないくせに、知ってる風にオレを気遣う様子に当時は多少 腹立たしく思ったりもしたが
今から思うとヴァザは本当に何となく察しがついていた様だ。
きっと、一緒に風呂に入った時、オレのアザを見たんだろう。
この孤児院には親に虐待されてやってきた奴も少数だが いるらしく、ヴァザは そういうのに敏感だった。)


…正直、そんな日々が数日 続いただけでも随分と精神にクるがオレの場合、数週間に渡り、激しい いじめが横行していた。
うつっぽい考えになりつつあった時、オレを助けてくれたのは、また、天使だった。
といってもヴァザやヴェルの様な大人ではなく、オレと同い年の奴。
そいつはオレが孤児院の図書スペースで絵本を読んでいると突然に寄ってきて友達になってくれと懇願してきた。
短めに切りそろえられた青い髪を揺らし、青い瞳をキラキラと輝かせて、女の様に頬を桃色にして、神に祈る様に両手を組んで。
何故、初対面のオレに 友達になってほしいと言うのかが理解できず、キッパリと断って そそくさと その場を去った。
だが、そいつは懲りずにオレの後を ずっと着いてくる。
孤児院で世話されている奴でもない様で、夕方になると帰って行くが、また次の日にやってきては しつこく友達になってくれとつきまとってきて…
そんな ある日、新手のいじめかと辟易しつつも無視して中庭に行くと、(普段から そこで遊んでる奴等は少ないけど)珍しく誰もいなかった。


「2人きりですねっ」


と嬉しそうに飛び跳ねる奴を見ると溜息しか出ない。
男、しかも悪魔と人間のハーフなんかと二人きりになって何が嬉しいんだか。
いい加減、相手をするのも疲れたので木の根元に座り込むと、そいつも一緒に座って


「あのね、僕、君の事が好きなんですよ!」


と、にこにこと底知れない笑顔で言ってくる。
結構とんでもない事を言っている気がするが どうせ大した意味もなく、ただ覚えた言葉を言いたいだけだろうと思って
そいつの顔なんて見ずに


「そっか。オレはお前の事好きじゃない。」


なんて言ってみた。
…直ぐ近くで どこか寂しげな、悲しげな気配がしてパッと そいつを見てみると
なんと、泣いていた。
オレに好きだと言った姿勢のまま ゆっくりと俯いて涙を零し、声を押し殺そうとして ひっく、ひっくとしゃくり上げる 声にならない音が聞こえる。
泣かせてしまった。
今度こそ 本当に 誰かのせいなんかではなく、オレが、泣かせた…。
その事実に驚くと同時に 好きじゃないと伝えただけで泣く相手の思考を理解できずに軽く目を瞠りながら


「な、何で泣いてんだよ!!」


立ち上がって、俯いて座り込んでいる相手を見下ろし、叫ぶ。
オレの声にビクリと肩を揺らした そいつは恐る恐る、オレの様子を伺いながら、といった感じで顔を上げる。
驚きと悲しみの混ざった様な表情をしていた。
そして、唇を震わせて か細い声で確認してくる。


「だ、って…、“好きじゃない”んでしょう…?
…僕は…君に、嫌われたんです…
それで、笑っていられる訳、ない…」


オレの返答を待つとうともせず項垂れる そいつを見て何とも言えない感情が腹の底、胸の奥から沸々と湧いてくる。怒り、に よく似ていた。
子供だったオレは その感情を我慢せずに垂れ流そうと口を開いて


「はあっ?!
オレが、いつ お前の事“嫌い”なんて言ったんだよ!
お前バカかよ!
何で勝手にオレの気持ちを お前が決めてんだよ!」


暴言ともとれる言葉をぶちまけた。
しまった、こんな風な言い方をしたら…余計に泣くんだろうな、と後悔しかけたが


「え…っ?
僕の事、嫌い…じゃないんですか…っ?」


パッと弾かれた様に勢いよく顔を上げる相手。
その顔には先程までの憂いに憂えた表情は全くない。
ただただ、驚きと希望に満ちている。
それに内心ホッとするやら思わず後ずさってしまうやら。


「嫌いじゃないんですねっ?」


「あ、あぁ…。」


「良かったぁ…!」


オレの返事に満足したのか、今度は心底嬉しそうに笑み、またもや涙の粒が一つ、ぽろりと落ちた。
それを慌てて袖で拭って跪く格好をし、両手を組んで神に感謝する神聖な雰囲気を作り上げて…何やら祈り始めてしまう。
そんなに感激する事ではないだろうと、そいつに圧倒されて後ずさった格好のままで固まっていると
直ぐに立ち上がってオレの手を繋ぎ、涙を拭うために袖で強く擦ったせいで少し赤くなっている目尻を優しく笑ませ


「じゃあ、友達ですね!」


と、何とも素っ飛んだ言葉を飛ばしてくる。
何で いきなり友達なんだ、それについては前にキッパリ断ったはずだ、というか嫌いじゃないっていうのは好きって意味じゃないぞ、などと突っ込みが止まらなくなるのだが
それら全てを口にしていたらキリがないのと、驚きすぎて声が出なかったせいで何も言えなかった。
思わず俯くと


「アレ、でも…そういえば何で“好きじゃない”なんて言ったんですか?
君は僕の事を“嫌いじゃない”んですよね?」


と、案の定、という感じの質問を投げかけてくる。
はぁ、と大きく溜息を一つ吐いて


「あのなぁ…、世の中、“好き”と“嫌い”だけじゃないんだ。よく覚えとけ。」


なんて年の割には大人びた事を言ってみるが
それは大人の受け売りであって本当に意味が分かって言っている訳じゃなかった。
でも、確かにオレは相手の事を好きでもなかった代わりに嫌いにもなれなかった。
一人にしてほしい時でも必ずウザい程に引っ付いてくるし、オレが いじめられている時にも空気の読めない発言(仲良くしましょうよ、とか。)をするし…
決して悪い奴じゃないというのは解るんだが どうにも好きになれなかった。
だけど、オレなんかの隣にいて心底嬉しそうに ずっと微笑んでるから冷たくあしらえないし…
何ていうのか、懐いて足元に擦り寄ってきてる犬を蹴り飛ばす事は出来ないっていうか。
そんな感じに憎めない奴でもあった。


「…?
難しい事を言うんですね、君は。
じゃあ、今度からは君に好きになってもらえる様に頑張ります!」


オレの言葉を やっぱり理解できてない様子の 奴は 明るく元気に宣言をする。
まぁ良いか、と思わず苦笑すると


「ふふ、良かった、笑ってくれた。」


どういう事かと眉を顰めると


「知ってますか? 君、僕と会ってから…もしかしたら その ずっと前からかもしれませんけど、一度も笑わなかったんですよ?」


なんて苦笑されながら教えられた。
それが不安でたまらなく、でも まだ一度も嫌いだと言われていない事を理由に、挫けそうな自分を叱咤してはオレに纏わりついていたらしい。
こいつはこいつなりに葛藤があったのかと新鮮な気持ちになると同時に、
だからこそ好きじゃないと言った瞬間に、嫌いと言われたと思って泣き出したのか、と合点がいった。


「あ、そうだ。
なかなか名前を教えてくれませんでしたけど…
そろそろ教えてくださいよっ」


もう、それなりに仲良くなったでしょう?とでも言いたそうな顔をしてくる。
言われて初めて そういえば最初に こいつに名前を聞かれた時は適当に言葉尻を濁して教えなかったんだと思い出した。


「あー…、そ、それは…
お前が名前を教えなかったから…」


つい言い訳がましい言葉が出てしまう。
本当は相手が先に自己紹介をしていたとしても教える気なんて毛頭なかったのだが。


「あー、言われてみれば そうですね… これは失礼しました。
僕の名前はヴェリザと言います。
さぁ、僕は言いましたよ。君の名前は?」


言い訳を真に受けたのか、それともオレに言い訳させる要素を残したくなかったのか
素直に名乗り、じっと見つめてくる。
逃げようと体をひねりかけるのを手を ぎゅっと握られる事で阻止され、仕方なく数秒ほど、相手の視線に耐えようとしたが
どうにも耐えられず、今日何度目になるか分からない溜息を吐いて


「…しょうがねぇな…
…オレの名前はイーヴルだ。
ほら、これで満足か?」


素っ気なく ぷい、と そっぽを向くと


「イーヴル…!
良い名前ですね!
これから よろしくですイーヴル!」


ガバッと勢いよく抱きつかれ またもや驚いて目を白黒させてしまう。
全く、ヴェリザといると驚いてばかりで何だか不公平だ、なんて思いながらも
ヴェリザの背中に手を回して久しぶりの人肌に心地よく思いながら ゆっくりと瞼を閉じると
相手も直ぐに動こうとはせずに そのままでいてくれた。


―それからというもの、ヴェリザはオレと友達になったと公言して回り、
オレを いじめる奴に対しては散々追いかけ回してオレの素晴らしさについて説いたらしい。
その おかげか、少しずつオレに普通に話しかけてくる奴が増えて、それに対して特に邪見にせずに普通に返答をしていると
オレは普通の奴だったんだと皆 言いだし、むしろ、最初にオレを悪く言った奴は誰だ という話になって
オレが それについては気にしてないから別に良いんだと言うと“案外 良い奴だったんだな”と、普通の奴から良い奴に昇格した。
悪い奴だと思われるのは心外だが、だからといって良い奴だと思われるのも面倒だったので自分らしく無理せずに周りと接しているうちにオレの居場所というのを確立できた。
そんなこんなで、思ったよりもアッサリと いじめが終わりを告げ、
ヴァザに驚かされて泣いていた あの女の子が、自分の友達が悪い噂を流したのかもしれない、代わりに謝る、と言って謝ってくれて…それからは特に変化がなかった。
好きな女の子も出来なかったし、告白されたりもなかった。
まぁ、ヴァザに驚かされて泣いてた、あの女の子に何故か結婚してほしいと言われた事があったがアレは告白とかじゃないだろう。
言ったって まだ10歳だし。
ケンカは…たまにストレスが溜まりまくって破壊衝動が抑えられなくなった時に先生に相手をしてもらっていた。
先生が近くにいない時は もれなく他の奴が犠牲になる法則だが
大体いつもヴェリザがオレの近くに居て、オレが他の奴と戦おうとすると率先して殴られにくるから よく考えればヴェリザ以外は まともに殴った事がない気がする。


――そして、14歳になった時…ここまで引き取り先が全くなかったのだし、そろそろ独り立ちさせるべきだという話がチラホラ聞こえ出した。
ヴァザのせいで泣いた あの子も既に引き取られていったし、他の奴等も もちろん引き取られていった。
オレと同い年で残ってる奴なんて もう一人もいなかった。
ヴァザもヴェリザも慰めてきたが そもそも引き取られて何になるんだろうか。
新しい家族と上手くやれるかも分からない、引き取ってくれる奴が良い奴かも分からない。
これは考えを飛躍しすぎだが、もしかしたら犯罪者とか誰かを虐待したいがために子供を引き取る奴もいるかもしれない。
引き取りの話が出た時、先生が ちゃんと その人と話をして引き取るに値する人かどうかを見るらしいが
どの先生だって、相手の考えが全部解る人なんて居やしないんだし、犯罪者の場合も、身辺を洗いざらい調べる事も出来ない。
実際、引き取られた子供で幸せになった奴は何人いるんだろうか。
引き取られていった奴等は皆 音信不通になる。
孤児院には二度と来ないし先生も引き取られた奴等の新しい家へ行ったりしない。
ちゃんとした機関が取り仕切っている訳ではないから そのへんが非常に曖昧だ。不安が募る要因だろう。
…なんて、理屈っぽく愚痴ってみたりして、オレに新しい家族が出来なくて良かったって思える様に頑張ってる。
いつから自分は こんな奴になったんだろうか。
最初からか。
最初から、自分の身に起こっている出来事を ありのまま、ストレートには理解できていなかった。


―さて、オレは ついに15歳になってしまい、独り立ちさせる為の家(アパートの一室)を用意され、
(ヴァザがオレに非常に甘かった お蔭で本来なら自分で選べないはずの家を選ばせてくれた。ただし、安い物件の中で、だが。)
毎月、普通に生活する分には困らない最低限の金を送る事を約束され、仕事しだしたら仕事をしたと手紙を送ってくれと言われた。
(仕事をして自力で生活できるようになったら金を送ってこなくなるらしい。そうでないと孤児院としての経営が成り立たないんだとか。)
ただし、もし17歳になっても仕事が見つかっていない場合、金を切るとも言われた。
そんなこんなで、オレは、数字にして約6年間を過ごした“仮の家”、“仮の家族”と別れを告げ、
たまには顔を見せに来るかもしれないとチビ達と適当に口約束を済ませて、
胸にある微かに感じる寂しさや悲しさを ぬいぐるみと一緒にダンボールに押し込めて 引っ越しは、完了した。
自分の部屋に着いた時には夜になっていて
(といっても 引っ越し先の地域は一年中太陽が当たらないから朝でも さほど変わらないが)
孤児院では ある程度 雑魚寝という感じで寝ていたので普通くらいの部屋でも やたらと広く感じ、心の隙間が どんどん押し広げられていく様な錯覚を起こす。
ダンボールの箱を開けて、大事にしていた ぬいぐるみ達が顔を見せ、それと同時に寂しさや悲しみが一緒に出てきた気がした。
その日、オレは久々に泣いてしまった。
晩御飯の事など すっかり忘れて泣きつかれ眠るベッドの中、明日は ぬいぐるみを買いに行こうと心に決め…―




―――…そこで、ゆっくりと目を開ける。
どうやら寝てしまっていた様だ。随分と懐かしい夢を見てしまった。


「母さんが死んでから孤児院を出るまで…か…すっげぇダイジェスト版って感じだったけど ほんっと、久しぶりだなぁ…」


ボソッと呟いてから、夢を見た後に思わず呟いてしまう事も、そういえば久しぶりだな、なんて思いながらオレは周りを見回す。
沢山の ぬいぐるみが並べられたベッド、テディベア柄の掛布団、ピンクのシーツ、ベッドの下には可愛らしいクマの顔がついているスリッパ。
スリッパを履いて ふと自分の格好を見てみると、ウサギの絵がプリントされているパジャマ(上下、もちろん婦人服コーナーで買ってきた代物だ。男物だと可愛いのがないというのと、どうせ婦人服と言ってもズボンなんだし、男物と どう違うのか理解できなかった。)を着ている。
パッと顔をあげると目の前には机。机の上にはケータイとPC…と、もちろん可愛らしいマスコットを飾ってる。
そして、朝食だか昼食だか分からない(もしかしたら夕食かもしれない)がキッチンに向かう。
そういえば今日はヴェリザが来なかったんだな、なんて思いながら。
(いつもはヴェリザが やってきて ちゃんとした物を食べないといけないとか言いつつ勝手にキッチンを借りて朝食と昼食を作って(たまに夕食の時間まで居て作って)いくのだ。)
これはラッキーとばかりに近くに置いてある菓子に手を伸ばし袋を開けてバリバリ食べつつチラと時計を見ると昼食の時間だった。
よし、夕食も菓子食べれる!と内心喜んでは他の菓子袋も手に持って寝室へ戻り、そこで椅子に座って机に向かい昼食をとりつつケータイをいじって友達からの返信を確認してから返事を返す。
今日は少し変な夢を見たけど まあ、いつも通りだ。
そして これからは17歳という期限に向かって仕事の事も考えないといけない。


「オレは どっちかってーと永遠就職が合ってると思うんだけどなぁ…」


恋人と一緒に暮らし、自分は主婦の様な事をして恋人に働いてもらえば良いじゃん。なんて。
最近 恋人と会えてないクセに考えてしまう。
最悪、ヴェリザの所に引き取ってもらうという手もある。
(孤児院を出た後、ヴェリザの家に行った時にヴェリザの親がヴァザだったっていうのが発覚して心底驚いたものの、
ヴァザは昔と変わらずに優しく、今ならばオレさえ良ければ引き取る事も出来るんだと言ってくれた。)
でも、それは同時にヴェリザと一緒に住む事にもなる。
それはいただけない。ヴェリザはオレの事を恋愛の意味で好きだったらしく、一緒に住んだら貞操が危ない。
色々と将来に対する不安もあるが それはしょうがないと自分の思考にキリをつけて黙々と菓子を食べてはメール返信にいそしむ。
そうやって“日常”が静かに過ぎていく―……



◆◇◆◇。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+。゜・+†。゜.+†。゜・+◇◆◇◆

はい、終わりました…
これで ついに放ったらかしにしていた小説、イーヴルの過去話が終わりました!!
小説を書いて ちゃんと終わらせれたのは久しぶりで とてもテンションが上がっております!
ここまで見て下さった方、ありがとうございます!


Pixivで小説として投稿したり、うごでも投稿したりできたら、と思っております。
多分、pixivは出します。
うごは分かりませんが…;

Myself past foolish -Evil-第三話 【愚かだった過去の自分 -悪-】

…そして ひとしきり母さんに話しかけたあと、手枷と足枷をナイフで切って


(縄って言ってもボロボロだから刃物で切ったら一発だな…。)


手足が自由になると ちゃんと、庭に埋めてやった。
墓の印である十字も木の棒で作った。


(…これで安らかに眠ってくれ…。)


ひたすらに祈った。
今から考えるとバカな話だ。
オレには祈りを聞き届けてくれる奴なんかいないのに。


(…オレが人間だったら、神様とやらも祈りを聞き届けてくれるのかな…。)


…いや、最初から神様なんていないんだ。
母さんがどんなに祈っても願いは叶わなかった。
それが良い証拠だ。


(…オレは、バカか…っ)


もう、母さんはいなくなった。
オレを庇護してくれる人は もうこの世に居ない。
だからって事もあろうか神様とやらに一瞬でも頼ろうとするとは…。


「…くっ」


オレはとりあえず家に入った。
もう夜も遅い。
オレは、まだ頭の整理がついてない様だから しばらくはまだこの家に居ようと思った。


そして頭の整理が出来たら、
…この家を出る。


…どこまでいけるか分からない。
不安の方が大きい。
けど、ここに、母さんとの記憶に しがみついてても
何も、元には…、戻らない…。


(…そうだ。もう何もかもが元には戻らないんだ。)


次の日、起きたら昼になっていた。
オレは、今まで母さんに起こされてたから起きてたのか…
と、早くも何やら くじけそうになる。


(いや、こんな事くらいで くじけてたらダメだ!
オレだってやろうと思えばできる!
今までは母さんがさせてくれなかっただけだ!)


そして昼食をとろうと思って冷蔵庫を開けたが…、


「…嘘だろ…。」


何も入ってなかった。
どうやら母さんはオレを殺して自分も死ぬつもりだったらしい。
冷蔵庫が空になってるって事は随分前から計画していたのだろう。


「…はぁ〜…っ
これから どうすんだよ自分…。」


思わず独り言が漏れる。
誰も聞いてないし良いか、と思ったのだが…


「…そこで何をしている」


(……?
声をかけられた…?)


周りを見渡しても人なんていそうにない。


(…そろそろ幻聴が聞こえ出したか?
オレ、案外精神的に弱かったんだな…。)


とりあえずは そう思って他に食べれそうなものは何かないかと
キッチンの棚を あさっていると


「だから、そこで何をしてるっ!答えろ!!」


…また声が聞こえた。


(こんなにハッキリと幻聴が聞こえるなんてなぁ…)


無視した。


「…おい。無視するな…。」


どう考えたって こんな所に人なんて寄ってくるわけない。
なのに声がするなんて…。
幻聴としか思えないけど放っておいてもうるさいし。
仕方ないか。


「…チッ…仕方ねぇなぁ。
幻聴だとしても ここまでうるさかったら ちと問題だしな。
…おい!何なんだよ!さっきから話しかけやがって!」


声がする方を向いてみると
いつからいたのか人―腰まで届くかと思われるほどの長髪で栗色の髪に綺麗な青い瞳をしている―が立っていた。
しかもただの人じゃない。
神様とやらにつき従っているという、天使とかいうのに よく似た姿をしていた。
そいつは呆れた様な声音で


「…俺だって好きで話しかけてる訳じゃないさ。
お前が死人の魂を食い荒らさないか心配なだけだ。」


と、訳の分からねぇことを言う。


「…?どういうことだよ。」


「この家で、昨夜、亡くなった方がおられるだろう。」


「…あぁ。確かに昨夜、母さんが…、」


オレが うつむきがちに言うと


「…母さん?お前の母だと言うのか?」


そいつは怪訝そうな顔をした。


「…何だよ。」


「昨夜 ここで亡くなられたのは人間の女性だろう?」


「オレの母さんだ。」


「俺の目には お前は悪魔にしか見えないんだが?」


「…確かにオレは人間じゃないけど…でも悪魔でもない。」


オレがそう言うと
そいつは汚いものを見るような目をした。


「…つまり?悪魔と人間とのハーフだと?
そう言いたいのか?」


「…そうだよ。」


「はぁ…。流石は人間だ。
悪魔の様な下等生物と子を成すなんて…。」


何故かそいつの言い方が癇に障った。


「な…っ!
父さんは下等じゃない!!」


「はいはい。それなりに力を持った悪魔なんだろう?
それじゃ、そいつを捕まえるとするか。
協力ありがとよ。」


「…は?どういう事だよそれ。」


「だから、お前の…親父?
そいつを捕まえるんだよ。
お前みたいな半端者を生み出した罪でな。
…んじゃ、お前の母さんの魂は貰ってくぞ。」


すたすたと勝手に人んちを土足で歩いて
庭に出たそいつはオレが母さんを埋めた辺りで
“何か”を手に包み込む様な動作をして去ろうとする。


「…ぁ…おい!!待てよ!!!」


「…」


オレの制止など聞こえていないかの様に そのまま翼を広げて去って行こうとする。


「〜っ待てったら!!」


とにかく、大切な物を盗られる様な妙な気がした。
待ってほしい思いで一杯だった。
いっぱいいっぱいな気持ちはオレの声にも表情にも出ていたはずだ。
なのに そいつときたら…


「…」


軽く一瞥しただけで羽ばたきだした。


「…っ!!
待てって…言ってんだろ!!!」


確かに、オレは そういった。はずだ。記憶が少し曖昧だけど。
気づいたら小さな火が その天使の羽に点いていた。
天使は慌てて火を消そうと もがいている。
だが空中で背中の方に点いた火を消すのは焦った思考では存外難しかった様で
しまいには地面に羽を擦りつけて鎮火していた。
オレは茫然とするだけだった。


(何で いきなり火がついたんだ…?)


そんな事を ぼうっと考えていると天使の口から怒鳴り声が響いた。


「おい! いきなり何をするか半端者!!」


「え…っ?」


一瞬、誰に向かって言ってるのか理解できず、周囲を見渡す。


「何を きょろきょろとしてるんだ!
お前がやったんだろう!
しらばっくれようとしたって無駄だぞ!
俺は この目で しっかりと お前が俺の翼に向けて火を放ったのを見たんだからな!」


「オレ…が…?」


そんな事するはずがない、出来るはずがない、と思いつつも何故か それを声に出す事が出来なかった。
何というのだろうか。
既視感がある様な…。


(何だっけ…?)


よく分からないうちに また天使が声を上げる。
今度は少し抑え気味に。


「…何故 そうまでして俺を止める。
俺は忙しいんだ。納得できない理由ならば制裁を加えさせてもらう。」


青色の美しい瞳が太陽の反射を受けてキラリと光る。
なんでか分からないけど―本能的な部分で、だろうか―怖い、と思った。
何が怖いんだろうか。大人に睨まれた事か、それとも“制裁”という言葉にだろうか。
―当時のオレは子供だったから“制裁”という言葉の意味は分からなかったけど―
それでも意を決して自分の言葉を紡ぐのは とても難しかった。
だが何も言わないのでは何も進まない。
天使は天界にでも帰ってしまうだろう。
そして自分は路頭に迷って…誰にも見向きもされずに独り… 嫌な想像をしてしまった。
ゴク、と唾を飲み込み、意を決する。


「…オレは、独りなんだ。
母さんがいなくなって、独りなんだ。
父さんは ここには来ない。もう二度と会わないと思う。」


そう、暗い表情で言うと、―俯いてしまっていたから相手の表情は見えなかったが―呆れた様な表情をされた気がして
やっぱり、天使って奴は薄情なんだ、と絶望しかけた時。
ふと、まさに天の声とでも言おうか。そうとしか表現できない声が聞こえた。


「…それは、気の毒だな…
悪魔と言っても お前はハーフの様だし…
ある程度、無理のない範囲で人間の願いを聞き届けてやるのは俺の仕事だし…
…よし、分かった。
下界には あまり干渉できないが
お前を世話してくれそうな奴の所にコッソリ連れて行ってやる事は出来る。」


「え…」


思わず間抜けな声が出た。
その、天の声としか思えない優しげな声、頼もしい力強さを秘めた声音。
それは間違いなく、目の前の天使の口から出た。
それに驚いてしまったのだ。


(だって、さっきから怖い顔しかしなかった。さっきから怖い声しか聞いてない。)


天使というのは困っている“人間”には優しいんだろうか。
だがオレは人間じゃない。
でも天使はオレが人間の血を引いてるから助けてくれるらしい。
そんな中途半端なルール(?)で良いのか天使。
まぁ、助けてもらえるのならプライドも何もかも かなぐり捨てて縋りつかなければ明日はない様な状態だったから悪態はつかないが。


「あ、ありがとう…」


「なに、礼を言うな。照れる。
さぁ、特に何も用意する事物はないか?
何もないなら今すぐにでも行くぞ。」


「え、い、今から?直ぐ?!」


あまりの性急さに驚く。
普通、長い時間をかけて引き取ってくれる所を探すんじゃないんだろうか。
何を どうするから長い時間がかかるのかを詳しく説明できる程の頭脳は残念ながら持ち合わせていなかったが
オレみたいな奴に そんな直ぐに新しい家族とやらが出来るとは思い辛かった。
慌てていると


「何を言っている。
…そうか、お前は世間知らずそうだし、知らないか…」


と、天使が何やら憐れむような、バカにしてるかのような目で見てくる。
実際は違ったのかもしれないがオレには そうとしか思えず、カチンときた。


「バカにすんな!知ってるよ!」


売り言葉に買い言葉みたいな物…というより条件反射だろうか。
知らないのに口をついて知ったかぶりの言葉が出た。
オレが知った被っているというのはバレたんだろう、天使が


「分かった分かった。
さ、早く行こうな。」


と、子供をあやす様な声音で手を掴んでくる。


「!」


子供をあしらう様な―“様な”というか そのままだが―その態度より、いきなり手を掴んできた事に驚いた。
最初、確か この天使はオレに対して嫌悪感すら露わにしていなかったか…?
なのに、何故 ここまで ほのぼのとした空気を作れるのだろう。
思わずボーッとして抵抗せずにいると、なかなか動かないオレに焦れたのか いきなり担ぎ上げられて大空へ飛び立たれた。


「な?! ちょ、やめ…!!」


いきなり飛び立たれて サァ、と顔が青ざめる。
別に、高い所が苦手だとか、怖いとか そういう訳じゃない―いや、本当は初めての経験で怖かったかもしれないが―。
肩に担がれたのだ。その状態で歩かれただけでも普段と違う景色や高さに驚いて暴れる子供は多いと言うのに
いきなり、飛び立たれたんだぞ、大空に。
確かに父さんが飛んでいる所は何回か見た事があったが
オレ自身は、父さんに『そんな小さな羽じゃ飛べないだろう』と笑われたのもあって飛ぼうなんて思った事がなかった。
だから当然の如く大空に対する憧れも普通の人間の子供と比べたら希薄だっただろう。
子供らしく、“オレ、今 空飛んでるー!”とか言ったりとかして はしゃぐなんてバカみたいな事は出来なかった。
だからといって落ち着いて自身の身に起きている出来事を分析して暴れたら危ないから動かないでいよう、とか考えれるほどの冷静さは持ち合わせておらず…


「やめろぉ!しぬ!おちるぁあああ!」


思い切り叫んでジタバタと手足を動かした。
そうする事で ずり落ちそうになって それが怖くて余計に叫んだ。


「あー! うるさい!!静かに出来ないのか!!
暴れるな!本当に落ちるぞ死ぬぞ!」


天使もオレの声に負けないくらい声を張り上げる。
死ぬ、とか落ちる、という言葉にビクッとなり暴れるのはやめたが…―というより、暴れられなかった―


「…っく…ひ…っ…く」


涙がボロボロと零れ落ち、泣き声を出さない様に必死だったからだ。
その様子に天使は慌てた様子もなく、暴れなくなって良かったとばかりに快調に空を真っ直ぐ進んでいく。
少しずつスピードを上げ、風が頬を叩くというよりは押しつぶしてきそうな程の圧迫感に泣く事すら忘れて
ぎゅっと目を瞑ると ふいに ふわっとした様な感覚があり、それでも目を開けてやるもんかという感じで目を開けずにいると上の方から声が聞こえた。


「こら、寝てしまったのか?
全く…暴れるわ泣くわ散々だったくせに寝ているのか…?
臆病なのか豪胆なのか分からないな…」


呆れ気味の その声は天使の声だった。
バッと目を開けて上の方を見ると青い宝石の様な綺麗な瞳が不思議そうにオレの目を覗き込んでいた。
正確には顔を覗き込んでいたのだが。
そしてオレ自身は雲の上に座って…などというメルヘンチックな展開では決してなく。
普通に土の上に座り込んでいる。
どうなっているのだろうか。
さっきまで空を飛んでいたんじゃなかったか…?
だが、よく考えてみれば途中で頬にあたる風の勢いがマシになったな、とは思ったが。
という事は、ふわり、といったような感覚は天使がオレを地面に下ろしてくれた感覚だったのだろうか。
そして、地から空を見上げると、先程まで やたらと近かった空が物凄く遠く見えて
どうせなら怖がらずに もっと楽しめば良かった、と後悔も そこそこに周りを見渡す。
近くには民家らしき物が見える。
ただ、その民家は一つだけでポツンとしており、周りにも住民が行きかっている様子は見えなかった。
深く考える間もなく天使に手を引かれて その、一つだけの民家に近付いていく。
近付けば近付くほどに どんどん大きく見えてくる家に驚きつつ、目立った抵抗はせずに そのまま家に近付き…
とうとう屋敷と言えるほどに大きく見える家の、不用心にも開け放っているままの大きな扉をくぐる所まで来た。
天使は普通に入っていく。その、あまりに普通に入っていく様子に思わず こちらの方が何かいけない事でもしでかしてしまったのではないかと焦ってしまうくらいだ。
本当に勝手に入って良かったのかと おどおどしていると ふいに声をかけられた。


「おや? 誰ですか?」


「!!!」


ビクーッ!と体を強張らせて口をついて謝罪の言葉が出そうになった時、
天使が


「あぁ、久しぶりだなヴァザ殿。」


と、声をかけてきた方―ヴァザというらしい―に挨拶をする。
どうやら知り合いだった様だ。
そして天使の後ろに隠れながらヴァザというらしい奴を見てみると青い髪に青い瞳で、天使と同じく翼が生えていた。
年齢は…多分、オッサン手前くらいだと思う。


(こいつも天使なのか…?)


怪訝そうにヴァザを見ていると ふいに こちらを見て


「おや、可愛い子だね。
この子、どうしたんだい?」


と、天使に言う。
思わずバッと俯いたが そんな事はお構いなしに


「あぁ、こいつはな、つい昨日 母親が死んだんだ。
でもって父親は既に蒸発しているらしい。それで、途方にくれている所を助け…
んー…助けた…というより、助けてほしい、というところだな。
ヴァザ殿は孤児院で働いているのだろう?
是非とも、種族など関係なしに こいつを世話してやってくれないだろうか。」


天使もヴァザに返事をする。
オレが置いてけぼりにされていて、それが何だか気に喰わなかったが
天使達が何を言っているのか、子供のオレには難しくて分からずに2人の会話に入れなかった。
そうして、2人の会話を聞き流していると どんどんとオレの事が勝手に決まってく。
もしオレが“新しい家族”を拒んだら、とか
もし“新しい家族”が見つからずに大人になったら、とか。
そんな、オレのこれからに関わる大事な事。
不安に駆られて天使の服の裾をキュッと握ると


「おい お前、名前は?」


急に天使がオレに声をかける。
何故いきなり名前なのか。不思議なのは不思議だがオレが その天使を すっかり信じ切っていたのもあってか
素直に


「…イーヴル。
イーヴル・ライト…」


と言うと


「そうか。俺はヴェルだ。
それで、こっちがヴァザ。
お前を世話してくれる奴だ。
さて、俺は そろそろ仕事に戻らないといけない。
後の事はヴァザに任せてあるから安心しろ。
…またな」


そう言って、こちらの有無を言わさずに入ってきた扉から外に出ていき、大きく翼を広げてバサリバサリと羽ばたいていった。
オレは… 突然の事に どうする事もできずに ただ茫然と立ち尽くし、
ヴァザをチラと見遣る。


「あはは。いきなりの事で驚いたかもしれないけれど、
あの人は忙しい人だからね。
許してやっておくれ。
さ、そんな所で立っていないで。
ここが、今日から君の住む家だ。
といっても、仮の家だけどね。
新しい家族が見つかれば そっちに住む事になる…
と言っても、君には まだ理解できないかな…?」


ヴァザは気遣わしげにペラペラと話しだすが
そいつの話は半分くらい理解できずに ただただ分かったふりをして頷く事しか出来なかった――


◆◇◆◇。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+。゜・+†。゜.+†。゜・+◇◆◇◆


はい、いったん ここで切ります〜
いやー、長かったですね。
ちょっと筆を置くつもりで休憩してから開始するまでが!
お蔭で文章の書き方とかが何か違ってますよアガガ…(・皿・;;)
私には連載は不向きだと理解しました。
長らく お待たせしてしまい 申し訳ありません。
え?待ってた人なんて誰もいないって? まぁまぁ そんな事言わずに。


私の書く自己満足小説で1人でも、人を楽しませる事が出来れば幸いです。なんて言ってみたり。
ちなみに、あらすじや第一話、第二話はカテゴリの“Myself past foolish -Evil- ”をクリックすれば簡単に見れますので、良ければ どうぞ。
ではでは、次は いつになるやら分かりませんが ここらで。

夢日記 ※鬱、グロ注意

結構 前に見た夢なのですが未だに強烈な程、印象深く記憶に残っている
夢です。

その夢の中では何故か目の前に女の人の死体があって、
同い年くらいの知らない女の子と一緒に その事件を解決する、
という様な雰囲気なんですが場所は直ぐに洗面所へと移動して
死体を調べた事によってついた血を洗い流していて、
その時に その女の子が
「あの死体の死因は何らかの衝撃で子宮が口から出たせいだね」
みたいな事を言いました。
私も同意見だったんですが そう話している内に口の中…というか
喉の方から何やら筋を噛み千切れなかった肉の様な物がせりあがってきて
そのままじゃ気管に詰まって息が出来なくなる、と思い
必至に吐こうとして口の中に手突っ込んで
ちょっとだけ出てきてるのを引っ張って…
やっとの思いで出てきたのは赤い肉の塊で…
口の中は血の味がしていて気持ち悪くて女の子の方を見たら
女の子が
「そう、貴女みたいに内臓を吐きだして あの女の人は死んだ…」
みたいな事を言ったあたりで目が覚めました。

気持ち悪くて怖くて思わず少し泣いてしまいました。

5/27の出来事

先日、高校で出来た新しい友達達と一緒に休みの日に遊びたいと話していた時、
私はカラオケに行きたいと言ったものの友全員が歌歌えないと言うので
友達とカラオケに行く事は断念したものの
カラオケに行く事自体を断念した訳じゃなかった私は
今日、(といっても この記事を書いてる時点では日付が変わってしまってるが)
父と2人でカラオケ行ってきました〜☆


見事にボカロの歌ばっかり歌いましたよ(`・ω・´)
まぁ、多少はボカロ以外の歌も歌いましたよ。
乙女ゲームの主題歌になってた歌(歌手名:藤田麻衣子 曲名:今でもあなたが)とか、


((ちなみに、静止画のままのが良いと言う方は↓)

(どちらも音源は同じはずです。)


あとは、個人的に気に入ってる歌(歌手名:BARGAINS 曲名:ジンセイ)とか。


まぁ、楽しかったです^^*


カラオケ行った後も、新しい服を買いに行ったりとか、本買ったりとか。

ちなみに、こんな本です

ハリー・ポッターと秘密の部屋

ハリー・ポッターと秘密の部屋

悪魔と小悪魔 (メディアワークス文庫)

悪魔と小悪魔 (メディアワークス文庫)

脇役の分際 (フェザー文庫)

脇役の分際 (フェザー文庫)

いちいち自分の持ってるのを写メるのも面倒なんで
ネット通販の商品紹介画像で勘弁してやって下さい←


もしかしたら この本(の どれかでも)読み終わったら
読書感想文でも書くかもです((ぇ




では、久々の更新が こんな私事ばかりで、申し訳ございませんでした。
見てくれる人が一人でも居る事を願っております。
では、また。

2012.02/28今日は久々に面白い夢を見た

2012.02/28(火)


ゲームの中の様な世界で 私はスーツを着た男になっていた。


とある家に入ると小さな女の子が一人で居た。
他に人はいないのか聞いたら 『お兄ちゃんが帰ってこない』 という。
女の子が泣きそうになり、仕方ないので適当に“お兄ちゃん”を見繕ってやろうと
その家から出て直ぐ近くの家に入り、
そこに居た10代半ばくらいの少年を引っ張って、女の子の家に向かうと
丁度 女の子の家から怪しげな男が出て行った。
セールスマンか もしや泥棒か。
気になって女の子の家に急いで入る。
すると、家の中は若干散らかっていて、女の子が泣いていた。
どうやら大切な物を盗まれたらしい。


仕方なく、怪しげな男が去って行った方向に走って行くと川が見えた。
そこで、視点は自分が適当に引っ張ってきた10代半ばくらいの少年になる。


何で こんな訳の分からない事にまきこまれなくちゃいけないんだとか思いつつ
橋の上から川を見下ろすような状態で そこに立っていると
一緒についてきた女の子と無理矢理自分を引っ張ってきた男が何か話している。


何を話しているか気になるけど どうせ自分には関係のない話…と思っていたら
男から釣竿を持たされた。
これで、女の子の大切な物を釣れという。
でも泥棒が盗って行ったなら川なんかで釣れるはずがないと言うと
男が『もしかしたら泥棒は、盗んだ物を川に放したかもしれない』と言って食い下がる
しまいには女の子も釣ってくれと泣きそうになりながら頼み込んでくるので断れず
もう どうにでもなれとばかりに釣って釣って釣りまくった。
なかなかお目当ての物が釣れず、雑魚ばかりが引っかかる。
川にいる魚 ほぼ全てを釣ってしまうくらいの勢いで釣っていると
ふと、金色に光る魚影を見つけ、女の子が その金色に光る魚影を指さし、
自分は それに頷き、その魚影付近に釣り針を落とす。


一拍 間が空き、瞬間、物凄い勢いで引っ張られる。
川に引きずり込まれそうなほどの力に驚きつつ、
力を抜くような事はせずに一生懸命 踏ん張っていると
男と女の子も力を合わせてくれた。


そして、渾身の力で引っ張り上げると金色の大きな鯉が姿を現した。
そのまま地面にベチャッと落ちた鯉はビチビチと元気に跳ねている。


やっと目当ての物を釣り上げる事が出来た達成感に喜びを隠せず、
思わず その鯉を抱きしめ、女の子を抱きしめ、男を抱きしめた。


女の子は この鯉が泥棒に盗まれた鯉なのだと言って、
もう会えないと思っていた、と嬉し泣きしていた。


男は、目当ての鯉が釣れるまでに雑魚を釣り上げすぎだ、と笑ってくるが
俺は そんな事 気にしない。


女の子が、ありがとう お兄ちゃん、と言ってくれる。


一日だけでも その女の子の“お兄ちゃん”になれた様で嬉しかった。




そう思った所で目が覚めた。

近況報告のつもり

母も連れていって自転車 見に行った!((いきなりww
んで、ちゃんと了承を得て買えたぜっ
っていうか何かねぇ、自転車を買う手続き(?)をし終えて
自転車用の傘立てを買った方が良いよねって事になって
父が自転車売り場の人に傘立てはどこか聞いたら
「5番売り場の所です」
とかぬかしやがるので5番売り場とやらを探しに行ったら
何故か自転車の売り場から離れる離れる。
わざわざ自転車を押して店内を長々歩いて、
紆余曲折し、たどり着いたのは……

ペ ッ ト 用 品 売 り 場
m9(^Д^)ぷぎゃー……

流石に頭にきた様子の父と母。
特に母。
直ぐに近くにいた店の人に
「自転車の傘立てを探してるんですけど?」
と聞き、
店員が「それは自転車売り場の方にありますよ」
とか言うもんだから
"自分らは その自転車売り場担当の人に5番売り場に行けと言われて行ったがペット用品売り場だった"
という事を言って、更に何か文句を言い、
父は自転車売り場の人に文句を言いに行って、
私は 父の方についていった。((
父が「自転車の傘立てが欲しい言うてんのに何で あんな関係ない所に行かんとあかんねん!」
と言い、
店員が「え、自転車のですか?」とか言うもんだから
「自転車 買うてんのに何で普通の傘立て買わなあかんねん!!」
と怒鳴り、直ぐに探してもらったものの、無いとの事。

仕方ないので母のもとに戻ると 母が店員に事の顛末を話していた。
んで、父と母とで文句を言い、やってきた店長も謝り、
母が警備員の人の態度も悪い、何もかもが悪い、と
何やら熱心にダメだと思った所 全てにダメだしをして店長が謝り、

そこまで怒鳴り散らす事もないかなーとかボーっと考えていたのは私www
まぁ、でも流石に傘立てを ちゃんと教えなかった店員は
それだけじゃなく、態度も悪かった。
無表情だし ちゃんと返事をしないし
手続き(?)をする時に
今から ちょっと手続きしますんで、みたいな事 言わなかったし。

あ、話は少し逸れちゃったけども
結局、さすべえ という商品名の傘立てを店員が持ってきて、
「何で あんねん。さっきは無い言われたで?」
と父が言うと
「あぁ、すいません;;」
と謝る店員。

何か、つまりは自転車売り場の人は どうやら
自転車の傘立て=さすべえ
という思考がなかったらしい。
多分、傘を立てて、しまっておく物だと思ってたんだろう。



まぁ、どうにかして自転車と傘立ては買い、 その事件(?)は終わって…
最近 自転車に乗ってなかったが故に
昼間に母の自転車を借りて店まで少し走っただけでケツ(の筋肉)が痛くて仕方なかった私は
店を出て、父の車に乗り、家路についた………((まとまらねぇなww

また仕様もない夢を見た…

2011.10/1(土)


今日の夢は田舎(父の実家)で爺ちゃんと一緒に昼ご飯を食べてた。
おかずは牛肉のたたきに白ゴマとポン酢をかけたもの。
(白ゴマはあり得ないほどかかってた。
もう牛肉の表面が白ゴマのすり潰した奴とかで覆われてた。)
結構 美味しかったと思う。
起きた時に味なんて忘れたけど。


それと、何か雑誌見てた。
喋るボーカロイド特集。
本当は人間が喋らせているって分かってるし
喋り方だってロボっぽいけどそれでも面白い。
雑誌なのに音声も再生されてた。
KAITO


「AKAITOなどの亜種も出てきますので
苦手な方はブラウザバックお願いします。


……全くぅ…マスターも無茶なんですから…。
10年前に行ったネズミーランドの事なんて
そんな覚えてませんよぉ…」


そんな様な事を言ってた。
もっと見たかった。




あと、お父さんとお母さんと私とでどこかテーマパークみたいな所行って、
そこでチーズ作りを体験させてくれる所に入って
パンみたいな硬そうに見えるチーズを見せて貰った。
でも実際は硬くないみたいで指でつまんだら簡単にちぎれた。
正直言って私、チーズ食べるの苦手なんだけど…
どんな風に作ったらそんなパンみたいになるのか気になった。


そんな所で目が覚めた。