Myself past foolish -Evil- 第一話 【愚かだった過去の自分 -悪-】

「――オレは本当に愛されていたのか?」
悪魔と人間の間に生まれたオレは その疑問から ずっと目をそらしてきた。


でも考えるまでもなく、おかしかったんだ。
忘れた頃に会いに来る父親。
オレを家に閉じ込めて絶対に外に出してくれなかった母親。


ついに全く会いに来なくなった父親。
それでも きっと来てくれると信じて自分からは動こうとしなかった母親。


愚かな父と母を絶対だと信じて疑わなかった愚かな昔の自分・・・。


――あの頃の出来事が ふと、せきを切ったように溢れてくる・・・、



「・・・まさか これが走馬灯とかいうんじゃねぇだろうな。」



オレは ただ、いつもの様に生活していただけなのに。
まさか夕べ食べたポテチに毒が入ってたとか?
いや、ありえない。
でも実際に体は動かないし脳も思い出ばかり再生しやがる。


あ、また意識が遠のく…
オレは、一体どうなってんだ・・・?






※作者注・ただの朝寝坊です。
そして ここからは夢の中での回想なので所々話が飛びます。







――10年前・・・、



今住んでいるクロウシティよりも もっと明るい所に住んでいた昔のオレは日差しが好きで、
母さんの目を盗んでは庭で遊び、見つからない様に こっそりと家に入った。
でもやっぱり母さんはオレの姿が見えなくなると直ぐに探し出す。



「イーヴル?イーヴルっ? どこにいるのっ!?」


「母さん。 どうしたの?」



オレは ただ少しばかり母さんの目の届かない所で遊んでただけなのに母さんは鬼みたいな顔してオレを探す。
そしてオレを見つけたら決まって…、



「イーヴル!! どこに行ってたの!? まさか、外に出たんじゃないでしょうねっ!?」


「ち、違…」


「…っ!!」


バシッ


「!?」



…オレが何を言おうとしても最後まで聞かず、お構いなしに殴ってくる。



「…はぁ、はぁ…っ」



殴られたオレより乱れた呼吸を直したら いつも…、



「…殴って、ごめんなさいね。 でもね、イーヴル。
母さんは お前の事が嫌いだから殴るんじゃないのよ?
お前の事を心配してるから、大切に思っているからこそ、つい感情的になってしまうの…。 解ってくれるわよね?」



…いつもこれだ。
母さんは いつもオレに“解ってくれるよね?”と聞いてくるが選択肢は1つしかない。



「…解ってるよ。母さん。 母さんはオレの事を愛してるから心配してくれるんだって、…解ってるよ。」



“解らない”などと言おうものなら どんな目に遭わされるか…。
…オレの答えを聞いた母さんは ようやく落ち着いた様子でオレを抱きしめて



「…そう。そうよ。母さんはお前の事を愛しているから こんなに心配するの。
だから、もう二度と、母さんの目の届かない所に行かないで。 お前は母さんとずっと一緒に居るの…。」



…まるで魔女の呪文だ。
耳朶から心の奥底まで入り込んで それが“絶対”だと信じ込ませる。



「…うん。 解った。 ずっと、母さんと居るよ。」



本当は母さんの傍には あまり居たくなかったけど  だからって また外に出たら どうなるかは目に見えてる。
それに、オレが ちゃんと言う事聞いてれば母さんは優しい。








…父さんが来た。




父さんはいつも“来た”という証拠に家の前に猫の死骸を置いていた。
真っ黒な猫の死骸が家の前にあるのを確認して嬉しそうに笑う母さんは少し怖かった。


『イーヴルも父さんが来てくれて嬉しいでしょう?』


『…うん。』


本当は嬉しくなかった。
たまにしか来ないなら いっその事、来なければ良い。
オレが母さんに 事ある毎に殴られてるのを知りながら助けてくれなかった父さんなんか来なければ良い…!


…どうせ来たって、オレに悪魔としての心がけを教えてくるだけだし。


『イーヴル、悪魔というのは たとえ親であろうと、
生涯を共にすることを誓い合った伴侶であろうと心の底から信用してはいけない。』


『はい。 …では、父さんは、母さんの事を…』


〔どう思ってるんですか?〕


…聞けなかった。


そんな事、聞くのが怖かった。
滅多に会わないせいで気安く砕けた話し方が出来なかったくらいなのに聞けるわけがなかった。
そしてオレの迷いなど気にする事なく大事な事だからと何回も教えてくる。


『…たとえ伴侶であろうと、信用してはいけない。』


『…』


『イーヴル、分かったな? たとえ誰であろうと信用するな。』


『…はい。』


これは“教える”というより“押し付け”だ。
…今思えばオレが あまり他人を信用できないのも父さんが原因だろう。


そして、父さんは まるでこれが最後とでも言うかの様に何度も
悪魔としての心がけを教えてきて、どこかへ帰っていった。








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予告から遅くなってスミマセン;
とりま、第一話はこんな感じです。
次回、第二話も 遅くなると思いますが期待はしないで下さいorz