Myself past foolish -Evil- 第二話 【愚かだった過去の自分 -悪-】

・・・それから一週間が過ぎた。
父さんは来ない。
これくらいなら いつもの事だ。
母さんも まだ平静を保ててる。


(でも、母さん 寂しそうだな…。)




・・・一ヶ月が過ぎた。
父さんは来ない。
母さんが前よりイライラしやすくなった。


(あまり声を掛けない様にしよう…。)






・・・半年が過ぎた。
父さんは来ない。
母さんはオレの顔を見るだけで殴ってくるようになった。
仕方ないからされるがままになっていた。


(…オレより母さんの方が ずっと辛いんだ…。 我慢しなきゃ…。)






・・・一年が過ぎた。
オレは父さんは もう二度と来ないって分かってた。
たぶん母さんも分かってたと思う。


でも毎日毎日、玄関に猫の死骸がないか探してた。


毎日毎日 同じことの繰り返し。
変わったところと言えば
昔より母さんの暴力がエスカレートしたって事(どこにも逃げない様にと昼間は手枷をつけられ夜は足枷もつけられる)と、
…(母さんが言うには、だけど)オレが段々父さんに似てきたって事くらい。


母さんは きっとオレが父さんみたいに母さんから逃げ出すんじゃないかと思ってるんだろう。
そんなことする訳ないのに。
逃げた所でどうせ、オレの事なんて誰もかくまってくれやしない。


…でも、たまに
オレみたいな半端物でも普通の奴みたいに扱ってくれる所があるかもしれないとか
逃げたら逃げたで何とかなるかもしれない。 なんて思う時がある。


でも、オレにとって母さんの存在は大きすぎて、逃げてもどこまでも追いかけられそうな気がした。






そして更に一年が経った。


オレの精神状態はギリギリだった。
もはや母さんに対する絶対の信頼なんてどこにもなかった。


…いや、そもそも絶対の信頼など初めからなかったかもしれない。
ただ、母さんの事を憐れんでいただけかもしれない。
それが、殴られる回数が増えてきてからは憐れんでいる余裕もなくなったと、そんな所だろう。

そんな中
(…母さんなんて居なくなれば良いのに)
と心の中で呟いた。それが最善の事の様に思った。




…そして母さんと過ごした最後の日…


その日は母さんは一日何か考えてたみたいだった。
でも何もなかった。
…が、夜になって、母さんは唐突に言い出した。


「…ねぇ、イーヴル。母さんはイーヴルと一緒に居れて嬉しいわ。
こんな生活がずっと続けば良いのに…。」


…母さんは狂ってるとしか思えない。
こんな生活の何が楽しいっていうんだろう。


(…そんなこと思ってるのは母さんだけだ…!!
母さんなんて居なくなったら良いんだ…!!!)


声には出してないが何となく伝わったらしい。


「…イーヴル? なに、その目は…!」


母さんが手を振り上げたのを見て、殴られると思い、次に来るはずの
痛みに耐えようと目をつぶる。
すると、何故か母さんは動きを止め、いきなり泣きだした。
一体何がどうなったというのか。


「…ごめんなさい…ごめんなさい…」


うわごとの様に謝罪の言葉を口にしている。
それなら最初から こんな事しなければ良いのに。




「本当はね、こんな事したくないの…。
でも、もう、どうしたら良いか分からない…!
ねぇ、イーヴル。
どうすれば良いの…?
どうしたら、イーヴルはお母さんとずっと一緒に居てくれる…?」


「母さん…。
……母さん、まず この縄を解いてくれないか?
話はそれからだ。」


「…いや。 それだけは、絶対に嫌よ。」


「母さん…!」


「だって、縄を解いたら逃げるでしょう?
その縄でちゃんと繋いでおかないと
…イーヴルも、母さんから逃げるでしょう…?」


「なに、言ってるんだ母さん!オレは逃げたりしない…!」


「いや。もう信じない。…ティディアスだって…、
私とずっと一緒に居てくれるって言ってくれたのに…
もう、帰ってこない…。
イーヴル。あんたも同じよ。
どうせ縄を解いたら、逃げてしまうんでしょ?」




…ティディアスは、オレの父さんの名前だ。
オレは父さんとは違うと言い返そうとした時、
母さんはオレの答えを聞かずに思いつめた表情で台所へと消えていった。


(…? 何をするつもりだ?)


そして、いくらか時間が経った。
いつもの様に食事を作ってくれているのかと思い違いするくらいには長い時間だった…。


「…イーヴル…。」


母さんが戻ってきた。
いつもならパンやスープを持ってきてくれるのに、母さんの手には何もない。
ただ、片手だけ後ろに回して何かを隠している風だった。




「…母さん? 何を持ってるんだ?」


「…!」




一瞬、母さんの肩がビクリと震える。


「…イーヴル。そんな事よりも、ね。
母さんね、イーヴルと、ずぅっと一緒に居られる方法、思いついたの。」


母さんの声は震えていた。
気付いたら肩も、腕も、全身、小刻みに震えていた。
嫌な予感がする。




「…イーヴル。 イーヴルは良い子だから母さんの言う事 聞けるよね…?」


「…。」




オレは“はい”とも“いいえ”とも答えるのが怖くて だんまりになった。
唾を飲む“ゴクリ”という音がよく聞こえた。




「…イーヴル? どうして何も言わないの?」


「…。」


「ねぇ、イーヴルは良い子だから母さんのいう事、聞くよね…っ!」




母さんは背中に回していた手をオレに向けた。
…鈍色に輝く刃が、オレに向けられた。
母さんは そのままオレに向かって走ってきた。


(このままだと母さんが手に持っているナイフがオレに刺さるよな…。
そしたらオレ、死ぬのかな…。)


そんな事をぼんやりと考えていた。はずだった。
オレは逃げるつもりなんてなかったのに。
母さんがオレに刃を向けるなら それを甘んじて受け入れようとしてたのに…
気が付いたらオレは向かってくる母さんを、蹴り飛ばしていた。


(…足枷つけられてても意外に動かせるもんだな…。)


と、呑気な事を考えていた。
ナイフを持ったままで蹴り飛ばされた母さんはどうなるかなんて考えてなかった。


ふと母さんを見ると
ノドにナイフが突き立ったまま動かなくなっていた。
不思議と気分が良い。


「…なぁ、母さん。
人って、こんなにも呆気ないもんなんだな。」


オレは動かない母さんに話し続ける。


「なぁ、母さん。
母さんがあれだけ信じてた天使も、神サマとやらも、この世にはいないんだな。
…母さん。せめて安らかに眠れるようにオレがちゃんと面倒見てやるよ…。」


母さんはこの世からいなくなった。
それだけの事なのに何故か何もかもが自由になった気がした。








◆◇◆◇。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+†。゜・+†。゜.+。゜・+†。゜.+†。゜・+◇◆◇◆




はい、今回も時間がかかった割に しょうもない出来になってしまいました^p^
サーセン失望しないで下しあ これが俺の実力でふ^p^←


てか何か鬱展開で終わってサーセンorz
書いてる本人(オレ)は割とどうでもないのですがご気分が悪くなった方には謝っときます。
サーセンorz
次回の冒頭にもう少し気分悪い鬱展開が続く予定ですのであしからず((


でも直ぐに鬱展開ではなくなりますよ!
…多分((ぇ


っていうか少し迷ってるんですけど、
イーヴルの過去は、全部書いちゃって良いんですかね?
ちなみにイーヴルの過去を全部書かないなら次回でこのオリキャラ小説終わります。
どうしましょう…。

よーし、皆さまからのご意見をお待ちしながら今日はもう寝ます←(現在午前3時20分過ぎ…)

ではまた!ノシ